エレン・ヴァンディック
リサーチ・マネージャー
ACL断裂の副作用として、早期に変形性関節症(OA)を発症するリスクがある。 WebsterとHewettは、ACL断裂の治療に異なる治療戦略を用いても、このリスクに差はないことを明らかにした。 筋肉のアンバランスや筋力低下によって膝にかかる力が大きくなることが、膝に悪影響を及ぼすと考えられている。 大腿四頭筋の筋力低下は、OA発症と進行の主な原因と考えられている。 股関節の筋力がOAの進行に及ぼす影響については、あまり知られていない。 回旋筋力は、前額面における膝の位置(arus/valgus)に影響すると考えられているため、本研究では特に注目した。 そのため、ACL再建後の股関節の強度が、症状、パフォーマンス、軟骨の構造的変化と関連しているかどうかが研究された。
この研究のデータは、Culvenorらによるコホート研究から得られたものである。 ACL再建術を受けた被験者の膝OAに関連する因子を決定した2015年の研究者である。 その結果、ACLを再建した膝では、反対側の健常な膝に比べてリスクが高いことが判明した。 膝蓋大腿関節はACL再建後に特に影響を受けた。 それゆえ、この研究が股関節の回旋筋力に興味を持ったのは、股関節の回旋筋力が膝の回りの瘤や弁瘤、ひいては膝蓋大腿関節のストレスに影響を与える可能性があるからである。
股関節回旋筋力は、ACL再建術の1年後に手持ち式ダイナモメーターを用いて評価した。 評価は、患者が仰臥位で股関節をニュートラルにし、膝を90°に屈曲させた状態で行われた。 筋力は3回評価し、各肢のピーク値を求めた。 これらの値にレバーアームを乗じ、体重で正規化した。
さらに、シングルホップ距離、トリプルクロスオーバーホップ、サイドホップ、片脚立ち上がりで機能的パフォーマンスを評価した。
ACL再建後1年と5年の時点で、参加者はKOOS(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)に記入した。 KOOS-膝蓋大腿(KOOS-PF)下位尺度も得られた。 また、膝蓋大腿部と脛骨大腿部の軟骨欠損を示すMRIスキャンも入手した。
111人の参加者がベースライン検査を受け、そのうち74人が5年間の追跡調査を受けた。 ACL再建肢と対側肢では、股関節外旋筋力に0.05Nm/kgのわずかな差が認められた。
ACL再建後の股関節外旋筋力の低下は、KOOSスコアおよびKOOS-PFスコアで測定した5年後の症状の悪化と関連していた。 内旋筋力の低下は、5年後のKOOS-PFスコアで測定した症状の悪化にのみ関連していた。
内旋と外旋の筋力向上は、1年後と5年後のすべての機能検査の成績向上と関連していた。 唯一の例外は、5年後の股関節内旋筋力とホップ・フォー・ディスタンスとの間に関係がなかったことである。
ACL再建後の股関節内旋・外旋筋力と、1年後の膝蓋大腿区画や脛骨大腿区画の軟骨病変との間に関連性はないようだ。 しかし、脛骨大腿軟骨が悪化する確率は、股関節外旋筋力が高いほど低下した。 股関節外旋筋力が0.1Nm/kg増加するごとに、軟骨悪化のリスクは0.61倍低下した。
体力が低下したのは、リハビリテーションが不十分だったためか、あるいは追跡調査期間中に参加者のスポーツ参加レベルが低下したためか。 膝の筋肉の筋力トレーニングは偏っていたが、より近位の筋肉にはあまり注意を払っていなかったのだろうか? この研究から浮かび上がってくる疑問はすべてそうだ。
股関節外旋筋力が0.1Nm/kg向上するごとに、軟骨劣化の発生率は0.61倍低下した。 しかし、これは5年後のX線写真上の変形性関節症とは関連していなかった。 しかし、これは股関節回旋筋が軟骨の劣化に対して重要な保護作用を発揮できることを意味しているのかもしれない。
本研究のデータは、ACL再建後の機能的、症候的、構造的転帰を評価した縦断的コホート研究から得られた。 そのため、今回の研究ではサンプルサイズを算出せず、対照群も含めていない。 観察研究という性格上、その効果がどちらの方向にあるか結論づけることはできない。 また、筋力の低下がKOOSスコアの悪化の原因であるとも言えない。 さらに、この研究では交絡因子のコントロールを行っていないため、他の変数の影響を判断することはできない。
ACL再建術後1年の時点で股関節外旋筋力が低いことは、5年後の追跡調査における機能的転帰の悪化と関連しているようだ。 しかし、発見された差は臨床的に有意なものではなかったと思われる。
参考資料
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